胃潰瘍・十二指腸潰瘍 gastric ulcer・duodenal ulcer
胃潰瘍・十二指腸潰瘍とは
胃潰瘍・十二指腸潰瘍とは胃酸やペプシンによる胃壁や十二指腸壁に対する侵襲により、粘膜下層あるいはそれより深く、胃壁や十二指腸壁が欠損した状態を指します。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍の症状とは
胃の痛み(みぞおちの痛み)
食後2~3時間後に症状を来す場合と空腹時や夜間に症状を来す場合など食事との関連はさまざまです。
腹部膨満感
食後に満腹感が長時間持続してしまうことを指します。
食欲不振
胃もたれやゲップなども伴うことも多く、食欲が減退することがあります。
嘔吐
胃の出口の近くや十二指腸で潰瘍の発生や治癒(ちゆ)を繰り返していることによる狭窄(きょうさく:せまくなること)を来すと食べ物が通過しづらくなり嘔吐します。
また胃の下部や中心部にかけて潰瘍の発生や治癒を繰り返すことにより胃壁が短縮(ちぢんでしまうこと)していまい、食べ物を十二指腸へ排泄(はいせつ)しづらくなり、急性胃拡張の状態となり嘔吐してしまうことがあります。 この場合は、薬物治療での改善が見込める可能性が低く、多くは待機的外科手術の適応となります。
貧血・吐血(とけつ)・黒色便(こくしょくべん)
胃壁や十二指腸壁が欠損して、潰瘍から出血を起こすと貧血、吐血(:口から血液を吐き出すこと)や黒色便(:便がコールタールのように真っ黒なものがでること)を来します。 血液が胃酸などにより酸化して黒色化するのです。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍の原因とは
胃粘膜は、胃酸やペプシンの分泌などの粘膜に対する攻撃因子と粘液や重炭酸の分泌、粘膜血流維持などの防御因子のバランスによって成り立っています。 さまざまな理由で、この防御因子が低下すると潰瘍が形成されてしまいます。 低下する要因を列挙いたします。
ピロリ菌感染
ピロリ菌についてはこちら
ピロリ菌ページへ非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS:nonsteroidal anti-inflammatory drugs)
抗炎症、解熱・鎮痛作用を有する薬剤の総称です。 頭痛や生理痛、整形外科領域の疼痛や歯科治療後等で内服されることが多いと思います。 つまり薬剤の副作用として胃潰瘍・十二指腸潰瘍を形成してしまう可能性があるので適切な胃薬を併用するようにしましょう。
ストレス
持続的な心理的な負荷により、自律神経の失調を招き、胃壁の血流障害を来すことがあるとされています。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍の検査とは
胃カメラ検査
胃カメラ検査で胃潰瘍の病期を診断します。 活動期・治癒(ちゆ)期・瘢痕(はんこん)期かを診断し、さらには胃がんとの鑑別診断のために潰瘍辺縁を狙って生検検査を行うことがあります。
また活動期の潰瘍には実際に出血している場合には、内視鏡的止血術が必要になります。 実際に出血していない場合でも、潰瘍底(かいようてい)に放置すると出血リスクとなる露出(ろしゅつ)血管(:破綻(はたん)した動脈の断端)を認めた場合も内視鏡的止血術の適応となります。 胃カメラにて背景胃粘膜を観察し、ピロリ菌の現感染状態か、除菌後胃粘膜か、あるいは未感染なのかを診断していきます。
内視鏡所見と問診とを総合してピロリ菌の現感染の可能性が疑われる場合は、尿素呼気試験・血液検査・尿検査・培養検査・便中抗原検査などでピロリ菌感染の有無を検査いたします。
胃カメラ検査について胃潰瘍・十二指腸潰瘍の治療とは
活動性出血を認める場合、あるいはそのリスクがある場合や穿孔(せんこう:胃壁や十二指腸壁が全層性に穴があいてしまうこと)のケースを除くと殆どが、保存的加療で治癒します。
薬物治療
プロトンポンプ阻害薬(PPI)やカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)などの薬剤で1~2か月で治癒します。
ピロリ菌除菌治療
ピロリ菌の除菌治療原因薬剤の中止
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS:nonsteroidal anti-inflammatory drugs)が原因の場合は、原因薬剤を中止した上で、上記薬物治療を行います。
内視鏡的止血術
活動性出血を認める場合や潰瘍底に出血リスクとなる露出血管(:破綻した動脈の断端)を認める場合は内視鏡的止血術の適応となります。
参考文献)
H.pyloriの感染の診断と治療のガイドライン 日本ヘリコバクター学会ガイドライン作成委員会2016年改訂版 先端医学社
消化性潰瘍ガイドライン2020(改訂第3版)日本消化器病学会