大腸ポリープ colorectal polyp
大腸ポリープとは
「ポリープ」というのは正確には病名ではなく、皮膚・粘膜などの面から突出し、茎をもつ卵球状の腫瘤の総称です。 つまり包括する意味合いは幅広く、良性腫瘍、非腫瘍性ポリープ、早期がんまで含まれます。 ポリープの種類の組織学的な分類は下記の通りです。
通常型腺腫(せんしゅ)
管状腺腫・管状絨毛(じゅうもう)腺腫・絨毛腺腫などに分けられます
Adenoma-carcinoma sequence(腺腫がん化説)
大腸がんは、主に腺腫を介してがんになるという仮説です。 大腸がんの主な経路とされております。
鋸歯(きょし)状ポリープ
- 過形成性ポリープ
- Sessile serrated adenoma(広基性鋸歯状腺腫)
- Mixed polyp(混合型ポリープ)
- Traditional serrated adenoma(古典的鋸歯状腺腫)
ポリポイド腺がん
良性のポリープ(主に腺腫)内に腺がんを合併しているものをいいます
大腸ポリープを切除する理由
前述しました、腺腫はサイズが大きくなると、がん化する確率が増加します。 論文の報告では10mmを超えるとがん化率は10~25%と幅広いですが、これは病理診断医のがんの診断基準が微妙に異なるためです。 鋸歯状ポリープに関しては、このルートからのがん化率は1.5~20%とされています。
大腸ポリープの切除方法について
Cold snare polypectomy(コールドスネアポリペクトミー)
高周波電流を使用せず、金属のスネアワイヤーで絞りこんで切除します。 腫瘍サイズが10mm以下で、かつ形態が非有茎性(:くきを持たない病変)で拡大観察で腺腫と術前診断された場合に適応となります。
切除可能な深さについては、粘膜下層はほとんど取れないためです。 この方法で切除可能な病変は限定的です。 高周波を使用した内視鏡切除と比較すると後出血などの偶発症が少ない傾向にありますが、両者には統計学的有意差はないというのが現状です。
Polypectomy(ポリペクトミー)
高周波電流は使用しながら、金属のスネアワイヤーで絞りこんで切除します。 熱を加えて切除することから、熱を加える時間が長かったりすると切除後の潰瘍底(かいようてい)から後出血(こうしゅっけつ)を来す確率が、cold snare polypectomy(コールドスネアポリペクトミー)よりも高い可能性があります。
EMR(内視鏡的粘膜切除術)
粘膜下層に粘稠度の高い液体を注入してから、スネアワイヤーで絞り込んでから高周波電流を流して切除する方法です。 腫瘍サイズが10~20mm程度の平坦な病変や陥凹型の病変、早期がんなどに適応します。 ここからは経験則ですが、形態が有茎性病変(くきを有する病変)にも、cold snare polypectomy(コールドスネアポリペクトミー)を無理に適応するよりもこのEMR(内視鏡的粘膜切除術)を適用したほうが、術直後かつ後出血も少なく、病変を確実にきれいに切除可能です。
最近は、高周波手術装置を施設として備えていないためcold snare polypectomyしか対応できない施設も増加しているので注意が必要です。 Cold polypectomyのみで対応できるポリープは先ほど述べたように限定的です。
この適応を超越した場合は、他の施設へ紹介となってしまい患者様にとって再度下剤を内服しなければならないなど、肉体的にも経済的にも2重の負担となります。 クリニックで検査を受けるならば、この3種類の切除方法を適宜使い分けるための機械装置・技量を有する施設での大腸カメラ検査を推奨します。
大腸ポリープ切除後の注意点
ポリープ切除後のコンプライアンス期間は1週間(2週間)となります。
ポリープ切除後の下記コンプライアンス期間が2週間となる患者様は、切除病変が10mm以上であった場合、抗血栓薬あるいは抗凝固薬を内服されている場合が該当いたします。特に切除病変の大きさは検査を行ってみて初めて判明する事象ですので2週間のコンプライアンスを準備されることを推奨します。
治療後の1週間(2週間)において、避けていただく行動を列挙いたします。
- 出張などの遠出
- 飲酒
- 汗をかく運動
- 自動車や自転車の運転
- サウナ浴や熱い風呂への入浴
- 香辛料などの刺激の強い食べ物の摂取
- いきむこと
- 重い荷物を持つこと
※下血が頻回に出たり、腹痛が治まらないときは当院または救急へ受診してください。
※下剤服用により、体は脱水になっています。こまめに水分補給をしてください。
※切除した当日は油っこい食事はお控えください。
※シャワーは可能ですが、切除当日の入浴は控えてください。翌日から入浴も可能です。
※血液をサラサラにするお薬を服用中の方は医師の説明があります。
大腸ポリープ切除の費用
- 大腸カメラ検査のみ:1割負担 2,500円前後、3割負担 7,500円前後
- 大腸カメラ検査+病理検査:1割負担 3,500円~5,000円、3割負担 10,000円~20,000円
- 大腸ポリープ切除:1割負担 7,000円~12,000円、3割負担 20,000円~38,000円
参考文献)
大腸ポリープ診療ガイドライン2020(改訂第2版)日本消化器病学会
大腸ESD/EMRガイドライン2019(第2版)Gastroenterological Endoscopy