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便潜血陽性 fecal occult blood

便潜血検査とは

便潜血検査とは、便に血液が混じっていないかを調べる検査です。 大腸などの消化管で炎症や潰瘍、腫瘍(ポリープ・がん)などが生じた場合に、便に血が混じることがあります。 便潜血検査はこのような消化管の病気の有無を推定するのに有用で簡易に行えるため、対策型検診、健康診断や人間ドックでも利用されています。

消化管からの出血量が多い場合は便が赤色や黒色(タール便)に変化し、肉眼で分かりますが、出血量が少ない場合には肉眼で確認することができません。 便潜血検査では、採取した便に試薬を混ぜてその変化をみる方法が用いられ、これによって肉眼で確認できないレベルの出血を検出することができます。 化学法と免疫法の2種類があり、本邦では、主に免疫法の2日法が使用されております。

便の採取方法と測定

検体は、受診者自らが採便棒で便の表面をまんべんなく、こすって採取していただきます。 この採取方法は、大腸がんは便への血液の付着は不均一で便内部よりも表面のほうが、血液が付着している部位が多く、効率な採便法としては便の長軸方向に長さ5cmで3本なぞる表面をこする採便法が望ましいという報告に基づいています。

便潜血検査陽性とは

2日分提出した検体のうち1日分でも陽性であれば、要精密検査となります。 大腸がんは、早期では自覚症状がほとんどありませんので、肉眼的な血便を認めないからといって放置しないようにしましょう。 むしろ精密検査を受診するよい契機ととらえていただけるといいと思います。

精密検査受診率が68.5%と低いことが問題点として挙げられております。 ただし、便潜血検査で陽性になったからといって、必ずしも消化管から出血しているとは断定できません。 トイレでいきんだ際に肛門の皮膚が切れる切れ痔で便に血が混じることがあるほか、女性では月経血が混入して陽性を示すこともあります。

便潜血検査の精度は?

2日法の大腸がんに対する感度は53~100%と非常に幅広いものとなっております。 Advanced neoplasia(:腫瘍径10mm以上の腺腫、絨毛成分を25%以上含む腺腫、高異型度腺腫)、言い換えると、病理組織診断では良性の診断ではあるものの、大腸がんの高リスク病変のことであり、この大腸癌の高リスク病変に対する感度は29.2%にとどまります。

便潜血陽性となった場合の精密検査について

大腸カメラ検査

内視鏡を肛門から挿入して、直腸から盲腸までの大腸全体を詳しく調べる検査です。 当院では特殊なケースを除き、120倍程度まで拡大機能を有する大腸カメラで挿入いたします。 ポリープなどの病変が見つかった場合は、即座に拡大観察を行い、良性かがんなのかの鑑別を行います。

拡大観察には画像強調観察や色素染色下の微細表面構造観察などがあります。 日帰り切除の適応であれば、そのまま切除可能です。 ただし、進行がんが発見された場合は病変の一部の組織を採取して、病理診断が行われます。 大腸内視鏡検査の前には、下剤を内服した上で腸管内をきれいにします。

大腸カメラ検査 大腸ポリープ、早期大腸がんの内視鏡治療

大腸カプセル内視鏡検査

大腸カプセル内視鏡とはカプセルの形状をした、大きさ11×31mmで、両方の先端に小型カメラが搭載されております。 片側のカメラの視野角(画角)は172°となっており、両側で併せて344°であり、ほぼ360°近い領域を撮影することができます。 さらにカプセルの移動速度を自動認識し、カプセルが速く移動した場合は単位時間あたりの撮影枚数を増やし、ゆっくりと停滞している場合は、単位時間あたりの撮影枚数を減らすなど、フレキシビリティを備えた撮像機能を有しております。

検査中に放射線を使用することはありません。 大腸内視鏡検査と同様に事前に下剤を飲んで大腸をきれいにする必要があります。 2014年に大腸にも保険適用となりましたが、その適応は「以前、大腸カメラ検査を行ったが挿入困難であった場合か、癒着(ゆちゃく)などにより挿入困難が予想される場合」に限定されます。 また狭窄がある場合も適応となりません。

病変を認めた場合において、組織検査や内視鏡的ポリープ切除などは行うことができません。 大腸カメラ検査をgold standardとした場合に、大腸カプセル内視鏡検査の6mm以上の大腸腫瘍に対する感度は84~94%、10mm以上では85~88%と概ね良好な成績でした。

大腸CT-コロノグラフィ

検査の前日に、大腸カメラ検査の約半分以下の量の下剤を内服します。 検査の当日は、肛門から細いチューブを挿入し、炭酸ガスを注入し、仰臥位(あおむけ)と腹臥位(うつぶせ)の2体位を撮影します。 炭酸ガスは15分程度で腸管から吸収されます。 腫瘍径6mm以上の大腸腫瘍に対する感度は59~91%、10mm以上の大腸腫瘍に対する感度は75~94%とされております。

長所

合併症がとても少ないことが挙げられます。

短所

  • 5mm以下のポリープの検出能が低いこと
  • 平坦な病変の検出を不得手としている。
  • ポリープを発見した場合に切除することができないため、再度下剤を内服した上で大腸カメラ検査を受けなければならないこと
  • 大腸カメラ検査のようにリアルタイム診断が不可能であるため、施設によって異なりますが、最低でも結果判明までに1~2時間、場合によっては翌日以降に報告することになる場合もあります。
  • 放射線被ばくがあるため、頻回に受けるのは避けるべきでしょう。低線量撮影の方向で行われていますが、被曝量は低線量化を行っても平均4.5mSvであったという報告があります。

大腸を調べる検査で、一番精度が高いのは、大腸カメラ検査であり、かつ検査の流れで病変が発見されれば、生検検査(病変の一部を採取して検査する)を行ったり、内視鏡でポリープを切除したりと多機能を有するものなのです。

大腸カメラ検査

大腸カプセル内視鏡と大腸コロノグラフィの比較

大腸カプセル内視鏡と大腸コロノグラフィの検査を受けられた後に、gold standardである大腸カメラ検査を行った報告を抜粋いたします。

  • 受容性については、78%の患者様が大腸コロノグラフィのほうが優っていると回答されておりました。 言い換えると、大腸カプセル内視鏡のほうが楽であったとも解釈できます。
  • 腫瘍径6mm以上の大腸腫瘍が検出された割合は、カプセル内視鏡が大腸コロノグラフィよりも2倍優れておりました。
  • 腫瘍径10mm以上の大腸腫瘍が検出された割合は、カプセル内視鏡が大腸コロノグラフィよりも1.6倍優れておりました。

注腸造影検査

検査はまず肛門に細いチューブを挿入し、造影剤(バリウム)と空気を注入します。 注入したバリウムは、できるだけ大腸粘膜表面全体に付着させることができるよう、体を回転させ、その後、レントゲン写真を撮影します。 注腸造影検査の短所は、大腸がんの頻度が最も高いS状結腸などでは腸の屈曲が強くレントゲン撮影上、重なりやすく、見逃しやすいことにあります。

大腸コロノグラフィ同様、放射線被ばくを伴うことです。 検査のみが目的ですので、短所は、5mm以下のポリープの検出能が低いこと、ポリープを発見した場合に切除することができないため、再度下剤を内服した上で大腸カメラ検査を受けなければならないことなどです。 最近は、注腸造影検査を便潜血陽性の方に提案する施設は激減しているものと思われます。

参考文献)
大腸ポリープ診療ガイドライン2020(改訂第2版)日本消化器病学会
Naoki K, et al: Evaluation of Exposure Dose Reduction in Computed Tomography Colonoscopy 人間ドック36(3) 395-401,2021