食欲不振 anorexia
食欲とは、人が必要とされる栄養源を補給するために、食事摂取を欲する本能の一つであります。空腹になると食事摂取に対する欲求が高まり、必要十分量を摂取すると、その欲求は消退するという一連のメカニズムから構成されています。食欲不振とは、食事を摂っていないにも拘わらず食欲が出ない状態です。
食事をしていないと血糖値の低下を招き、胃が収縮して脳の視床下部に存在する摂食中枢が刺激され「空腹」を感じます。何らかの理由で脳が食欲を感じにくくなっているのが食欲不振なのです。
精神的に、とても落ち込んだり、悲しいことがあったり、また肉体的には疲労困憊であったりすると食欲不振になります。たいていは、食欲不振は一時的であり数日内には軽快し食欲を感じます。しかし、1週間以上食欲がない状態が続く場合は、精神的な、あるいは肉体的な問題・疾患が原因である可能性があります。また、薬剤の副作用によって食欲不振が起こることもあります。
食欲不振は、食欲を感じなくなっているだけで、食事が必要なくなったわけではありません。低栄養状態は肉体的にも精神的にも悪影響を及ぼします。何日にもわたり食欲不振が続くようなら医療機関を受診しましょう。
食欲不振の症状
食欲不振の単独の症状のみを有しているという患者様は実際には少なく、その他の症状を伴っていることが多いようです。 吐き気・嘔吐、腹痛、腹部膨満感、便秘などの消化器症状の他に、発熱、貧血、浮腫、るいそう、頭痛、めまい、全身倦怠感などを有していることがあります。
食欲不振の原因
- 消化器の疾患によるもの
- 感染性胃腸炎を発症し、胃腸炎自体は改善したが下痢・便秘や食欲不振になった
- 急性感染症
- 甲状腺機能低下症
- 精神的な問題:職場のストレス・親しい人との離別・転居などをきっかけとした「うつ状態」やうつ病、摂食障害など
- 生活習慣の乱れ:暴飲暴食、睡眠不足、運動不足
- 薬の副作用
食欲不振の検査
血液検査
ある程度広範囲(肝臓・膵臓・腎臓・甲状腺・炎症レベルなど)を網羅(もうら)的に検査します。
尿検査
血液が混じっていないか、蛋白・糖などが漏出(ろうしゅつ)していないか、それに加えて白血球や細菌なども必要があれば検索します。
腹部エコー検査(腹部超音波検査)
肝臓・胆道系・膵臓・腎臓・腹水の有無など主に消化器の病気の検索を行います。
胃カメラ検査
食道・胃・十二指腸までを観察し原因疾患の有無を調べます。
大腸カメラ検査
大腸がん、大腸ポリープだけでなく、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患などの炎症を起こす疾患も含めてスクリーニングを行います。