吐き気・嘔吐 nausea・vomitting
吐き気は、嘔吐しそうな不快感のことで、悪心ということもあります。吐き気に続いて嘔吐が起こることが多いです。胃が強く収縮し、胃の内容物が食道に押し上げられて口から出ることを嘔吐といいます。吐き気や嘔吐は何らかの原因によって、脳の中(脳幹)にある嘔吐中枢を刺激するさまざまな病気で起こり得ます。一部に緊急性のある疾患を含んでおりますので注意が必要です。
緊急性の高い吐き気・嘔吐
以下の項目にあてはまる場合は、早めに医療機関に受診するようにしましょう。
腹痛や発熱を伴っている
腹痛を伴っている場合は、症状別解説の腹痛
- 今まで経験したことがないほどの強い頭痛を伴っている
→中枢・脳神経系疾患の可能性があります - 「ろれつが回らない」「目が見えづらい」「体が重くて動かしづらい」「ボーっとする」などの症状を伴っている
→中枢・脳神経系疾患の可能性があります - 吐き気・嘔吐が続いており、1日以上水分摂取も困難な状態である
→脱水状態により電解質異常などを招くリスクがあります - 月単位で振り返ると、数Kg体重減少を認める(急激な体重減少)
吐き気・嘔吐が起きた場合にチェックすべきポイントがありますので以下に列挙します。
- 嘔吐が起きた状況について;(吐き気に続いて起こる、吐き気がなく突然起こる)
- 嘔吐が繰り返されるか
- 吐しゃ物の性状(胃液が多く混入している、便の臭いが混じっている、胆汁が混入して茶褐色、血が混じる、コーヒー残渣様など)
- 排便や排尿はあるか、下痢を伴っているか
- 吐き気・嘔吐以外に付随した症状はあるか(頭痛、意識障害、めまい、脱水、皮膚の乾燥、口渇、胸痛、腹痛、下痢など)
以上のようなことを問診で聴取しながら診断プロセスに進んでまいります。
嘔吐には中枢性嘔吐と末梢性嘔吐の2種類に分かれ原因疾患も異なります。
中枢性嘔吐
種々の原因により脳内にある化学受容体誘発帯(CTZ)から嘔吐中枢へと刺激が伝導するなどして嘔吐反射経路が作動し嘔吐が出現します。
中枢・脳神経系疾患
- くも膜下出血
- 脳出血
- 脳腫瘍
- 髄膜炎
- 脳外傷
- 片頭痛
内分泌・代謝疾患
- 糖尿病性ケトアシドーシス
- 低血糖
- 尿毒症
- 甲状腺機能亢進症
- 副甲状腺機能亢進症
- 電解質異常
感染症
食中毒
内耳疾患
メニエール病
末梢性嘔吐(反射性嘔吐)
消化器疾患(感染性胃腸炎や胃・十二指腸潰瘍、腸閉塞など)や肝臓・胆のう疾患(胆のう炎・胆管炎、胆石、急性膵炎など)、または腎臓疾患(慢性腎臓病、腎盂腎炎など)や生殖器疾患(婦人科系・泌尿器系)のときにみられる嘔吐です。内臓からの反射により嘔吐が現れます。心筋梗塞のときに見られる悪心・嘔吐も反射性嘔吐によるものに分類されます。
婦人科系疾患
- 卵巣腫瘍
- 卵巣のう腫茎捻転
- 卵管炎
- 妊娠初期
腎・泌尿器疾患
- 腎盂腎炎
- 尿路結石
心疾患
心筋梗塞
消化器疾患
- 腸閉塞(イレウス)
- 感染性胃腸炎・感染性腸炎
- 胃がん
- 急性胃粘膜病変(急性胃炎)
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍
- 胆のう炎
- 胆管炎
- 急性膵炎
その他
- ストレス
- うつ病などの精神疾患