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大宮駅ささじま消化器内科・内視鏡クリニック
院長 笹島 圭太

【略歴】

  • 1998年 千葉大学医学部卒業
  • 1998年 千葉大学附属病院消化器内科入局
  • 1999年 船橋市立医療センター 消化器内科
  • 2002年 昭和大学横浜市北部病院消化器センター
  • 2007年 国立国際医療研究センター 消化器内科 厚生技官
  • 2009年 さいたま赤十字病院消化器内科 副部長
  • 2013年 第二消化器内科部長
  • 2017年 消化管内科部長
  • 2017年 内視鏡センター長兼任
  • 2024年 大宮駅ささじま消化器内科・内視鏡クリニック 院長

【資格】

  • 医学博士
  • 日本消化器内視鏡学会 社団評議員・指導医・専門医
  • 日本消化器内視鏡学会 和文誌査読委員
  • 日本消化器病学会 学会評議員・指導医・専門医
  • 日本消化管学会 代議員・胃腸科指導医・専門医・認定医
  • がん治療認定医機構 がん治療認定医
  • 日本内科学会認定医
  • 昭和大学横浜市北部病院 消化器センター兼任講師

VIO3を使用した日帰り大腸内視鏡手術の安全性と根治性の確保

はじめに

一般的な早期大腸腫瘍に対する切除方法は、Cold Forceps Polypectomy(以下CFP)、Cold Snare Polypectomy(以下 CSP)、Hot Snare Pol ypectomy(以下HSP)、Endoscopic Muc osal Resection(以下EMR)、Under Water-EMR(以下 U-EMR)、Endoscopic Submucos Snare Polypectomy(以下 CSP)、Hot Snare Polypectomy(以下HSP)、Endoscopic Muc osal Resection(以下EMR)、Under Water-EMR(以下 U-EMR)、Endoscopic Submucos al Dissection(以下ESD)等があるが、早期大腸腫瘍を内視鏡切除するにあたり、腫瘍径と、 術前診断に 基づいて • 低異型度腺腫/sessile serrated lesion(以下SSL) • 高異型度腺腫~T1 a癌 • T1b癌 の3つのカテゴリーに分け、内視鏡治療を施行す るか、あるいは外 科手術を依頼するかを総合的に勘案することになる。

当院では、全例において発育進展に基づいた肉眼形態 診断を行ってか ら拡大内視鏡診断を行っている1)。腫瘍の3つのカテゴ リーのうち高異型度腺 腫~T1a癌を術前診断として想定した場合 には、腫瘍径が小さ くても【1】断端陰性での治癒切 除を確保するこ と【2】正確な病理組織学的評価を可能とする摘除標本を提出することを目的 にEMRを選択 している。CSPの適応は、腫瘍径10mm以下かつ通常観察および拡大観察で明らかに低異型度腺腫もしくはSSLと診断された症例に限定してい る。Hot biopsyは、切除対象 病変が5mm以下に限定される にもかかわらず熱変性によるリスクが大きいため当院では一切 行っていない。また、 CFPも切除後の検体回収は容易であるが、CSPかHSPを行うためほとんど行っていない。

高周波手術装置を有さないクリニックなどの施設に おいて早期大腸癌に対して無理にCSPを施行し、結果的に最終病理組織診断において断端陽性と判明し、基幹病院に紹介となりかなりの長期 間のフォローのストレスを患者に強いてしまうことになる。基幹病院勤務においてCSPの「好ましくない流布」の症例を経験してきた。 さらに、CSPとい う切除手技の特性により標本の挫滅で深達度が 不詳となり結果的に進行癌で再発を招いた報告もある2)。 近年、資材費の 高騰が日々の診療を圧迫しているにも拘わらず、内視鏡治療の診療報酬は十分に見合っているとは言い難い現状がある。しかし、内視鏡治療 を行う内視鏡医 は、症例毎に最適な治療を行うための診断も含めた技術の修練を積み、各種デバイスの選定や高周波手術装置の設定のカスタ マイズに努め偶発症を最小限にする準備をした上で日帰り内視 鏡治療に臨むべきである。

なお、当院では抗血栓薬・抗凝固薬を内服中の症例 においても内服を継続したまま切除を実施している。薬剤の内服に関して、予防的などの内服の必然性が低 い場合は、循環器内科や神経内科 の主治医にコンサルトを行い、不必要な出血リスクを回避できるよう、 常にリスクとベネフィットのバランスを考慮した対応を心がけている。

執筆内容全文

スライド

ESD②(静止画)

日帰り内視鏡手術について

ひと口に日帰り内視鏡手術といっても、施設ごとに適応の幅は大きく異なる。「日帰りESD」を行うことを、躊躇する内視鏡医が多いかもしれない。

外来での早期大腸病変に対する日帰り治療と入院管理下の治療における比較で後者の方が、安全性が高いというエビデンスは今のところない。

こと早期大腸腫瘍に関しては、高周波手術装置を装備せずCFPやCSPしか施行していない医療機関は、理論上10mm以下の低異型度腺腫しか切除できず、当院のEMR適応の(1)(2)(3)は適応外となってしまうことが多いと考えられる。このような病変に遭遇した場合に、対応できないため高次医療機関に紹介受診、下剤内服、入院治療となるという現実を無数に見てきた。また、高周波手術装置を備えている施設でもEMR適応病変には限定的にしか治療を行っていないことが多い。患者にとっては経済的・肉体的に二重の負担を強いられることになり、紹介元の医療機関にとっても機会損失となっている。技術的な修練と高周波手術装置を装備された上での過不足ない日帰り内視鏡手術に臨まれることを願ってやまない。

参考文献

  1. 工藤進英 大腸pit pattern診断 医学書院
  2. Kato M, et al. Second local recurrence with advanced rectal cancer after salvage endoscopic mucosal resection of local recurrence following initial
  3. ld polypectomy. Dig Endosc 2017;29:636.
  4. Hidenori K et al. Endosc Int Open 1: 2025 ; E378-386
  5. Hidenori T et al. Indication and tips for endoscopic mucosal resection. Endoscopia Digestiva 2023;35(10):1420-1423
  6. Minakata N et al. Hot snare polypectomy vs endoscopic mucosal resection using bipolar snare for intermediate size colorectal lesions: propensity
  7. ore matching. World J Gastroenterol 2023; 29: 3668-3677.
  8. Takemasa H et al. Lesions extending over multiple folds:tips of bridge formation method. Endocopia Digestiva 2022;34(10)1675-1679
  9. Masahiro A et al. Bridge formation method in colorectal endoscopic submucosal dissection. Dig Endosc 2023;35; e11-e12