アニサキス anisakis
アニサキスとは
アニサキスは線虫という種類の寄生虫です。 ヒトに食中毒を引き起こすのはその幼虫で、白色で体長2~3cm程度です。 アニサキスは、クジラやイルカなどの海棲哺乳類を終宿主とします。 終宿主の海棲哺乳類から糞便とともに海中に放出されたアニサキス虫卵は、第二期幼線虫に発育した後に海中に遊出します。
第二期幼線虫は、中間宿主であるオキアミに捕食され第三期幼線虫へと発育します。 第三期幼線虫が寄生したオキアミは、サバやイカなどの魚介類に捕食されることになります。 この第三期幼線虫を有する、魚介類を人ヒトが摂取することにより、アニサキス症が発症することになります。
アニサキスの症状とは
アニサキス症は、アニサキスの刺入部位によって胃アニサキス症、大腸アニサキス症、小腸アニサキス症(まとめて腸アニサキス症ともいいます)、腸管外アニサキス症に分類されます。
胃アニサキス症
劇症型アニサキス症
魚介類の生食後数時間して,激しい上腹部痛(胃痛),悪心,嘔吐をもって発症するのが胃アニサキス症の特徴で,ヒト症例の大半がこの症状を呈します。 食歴に関する問診と臨床症状から劇症型胃アニサキス症が疑われる場合は,胃カメラ検査で虫体を検索し、確認できたら摘除いたします。 摘除した後は、速やかに症状は改善していきます。
緩和型胃アニサキス症
健康診断などの胃カメラ検査で偶然虫体が発見されることもあります。 自覚症状はほとんどありません。
腸アニサキス症
虫体が腸に穿入する腸アニサキス症では腹痛、悪心、嘔吐などの症状が見られ,時に腸閉塞や腸穿孔(せんこう:全層性に穴があくこと)を併発することもあります。
消化管外アニサキス症
まれに虫体が消化管を貫いて腹腔内へ脱出後、大網、腸間膜、腹壁皮下などに移行し、肉芽(にくげ)腫を形成することもあります。 虫体寄生部位に応じた症状が現れます。
アニサキスアレルギー
魚介類の生食後に蕁麻疹を主症状とするアニサキスアレルギーを認めることがある。更に血圧降下や呼吸不全、意識消失などのアナフィラキシー症状を呈した症例も報告されています。
アニサキス症の検査
問診や症状などから胃アニサキス症が疑われる場合は、緊急で胃カメラ検査を行います。
胃カメラ検査
胃カメラ検査の際に胃粘膜に刺入(しにゅう)したアニサキスの虫体を確認できた場合はその場で鉗子を用いて摘除します。 腸アニサキス症の頻度は1%未満とかなりまれですが、症状的に必要であれば腹部超音波検査や大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を行います。
緊急胃カメラ検査に関しては最低でも食後6~8時間程度経過していないと胃内に食物残渣が残っていてアニサキスを発見し摘除することができません。 食事を摂らずにお電話いただけると幸いです。 また、現在のところ幼虫に対する駆虫薬は開発されておりません。
胃カメラ検査について寄生する頻度が高い魚介類
サバ、アジ、サンマ、イワシ、タラ、カツオ、サケ、マス、イカ
アニサキス症の予防
海産魚介類の生食を避けること、あるいは60℃で1分以上の加熱後に摂取することが確実な感染予防の方法となります。また-20℃で24時間以上の冷凍処理によりアニサキス幼虫は感染性を失うので、魚を冷凍して解凍後に生食することは感染予防に有効です。
参考文献)
アニサキス症とは 国立感染症研究所
山田貴教ら 胃アニサキス症 47-49 消化管症候群(第3版)日本臨床