• 1月 5, 2025

大腸カメラ検査前に事前診察を受診いただく理由

 大腸カメラ検査について2回に渡り述べてまいりました。
 1回目は、「苦痛」と「下剤内服」に対する不安についての当院の対応。
技術的に内視鏡医として中核病院などの症例が多い施設で15年程度の修練が必要であること。
大腸の早期病変の診断領域では、病変を120倍の倍率で観察できる拡大内視鏡は、病変の質的診断の向上には必須であることを述べました。

 2回目は、便潜血検査陽性の方が大腸カメラ検査を受診なさる場合などには、10mm以上の病変だと日帰り内視鏡手術の適応としていない施設が多いこと
そのような病変が発見された場合に、病院に紹介され再度下剤を内服となり、入院となることが多いため、時間、肉体的、さらには経済的な負担を複数回強いられることになるので、単に「鎮静剤を使用している」「苦痛が少ない」ことをチェックするだけでなく、病変が発見された場合も想定して医療機関を検索することを推奨するということを強調いたしました。

 さて今回は、大腸事前診察についてです。
当院では、大腸カメラ検査をご希望される患者様には事前問診の診察を必須としております。
理由を重要度の高い順に記載いたします。

1:高度便秘、便秘のあとに下痢や粘液便が排出されるなどの症状や、排便の前に腹痛を伴うなどの症状の患者様の場合。
このようなケースの中に、閉塞性大腸癌のためにこのような症状を来している場合があります。すでに大腸癌のために腸閉塞に近い状態になっている可能性が否定できな場合は、事前にCT撮影していただくことが必要になります。事前のCTで閉塞性大腸癌の診断となった患者様におかれましては、前処置なしで大腸カメラ検査を行います。
もし、腸閉塞に近い状態まで進行した閉塞性大腸癌の患者様に腸管洗腸下剤を内服していただくと場合によっては腸管穿孔(腸が破けてしまうこと)を起こし腹膜炎を併発し、緊急外科手術および人工肛門の造設が必要になってしまいます。
患者様の安全確保のため問診で事前CTが必要なケースを選り分けます。

2:便秘の患者様は、そのレベルに応じて、事前に下剤の強化を行います。当日の洗腸の質が病変の発見率や検査時間などの患者様の便益に直結するからです。

ここからは併存疾患の確認になります。
3:腎機能障害がある場合に、内服いただけない洗腸下剤があるため、直近に受診された健康診断の血液検査結果を持参いただけるとありがたいです。

4:抗血栓薬・抗凝固薬などの血液をサラサラにする薬剤を内服されている場合は、併存疾患も確認する必要があります。ご存知ない場合は、診療情報提供書などで情報照会を行う場合もあります。

5:緑内障の患者様についてです。内視鏡医の中には
 ’緑内障の患者様には、ブスコパンなどの腸の動きを弱める薬剤が使用できない’
と勘違いしている方もいるのですが、実際はブスコパンが使用できない患者様は、緑内障の中でも閉塞隅角緑内障(狭隅角緑内障)の方だけなので、どの緑内障なのかをご存知ない場合は、かかりつけの眼科にご確認いただく必要があります。

6:その他アレルギー、既往症を確認します。

7:当院は、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の適応となる病変以外は大きくても(開院してから半年程度ですが30mmまで切除しました)、日帰り内視鏡手術を施行しております
大きなポリープ(腫瘍)を切除した場合には、切除後の後出血(帰宅なさってから下血を来すこと)の期間も長くなりますので事前のコンプライアンス期間を2週間とさせていただいております
勿論切除後に10mm以下であれば1週間となるわけですが、検査前にはどのようなサイズの病変が発見されるかは、判らないですよね。

ご理解いただけましたでしょうか?
事前診察がない場合、検査の予約をなさって、当日初診→下剤内服・大腸カメラ検査となるので、ポリープを切除できないケースや、夕方になってもなかなか洗腸されないためにご帰宅が遅くなることも憂慮されます。

当院では、まずは患者様の安全確保や腸管洗腸という便益のため、既往症のチェックのために事前診察を設けていること、大きなポリープ(腫瘍)であっても切除適応としていることから、患者様の事前のスケジュール調整が必須であります。

何卒ご理解いただければ幸いです。

大宮駅ささじま消化器内科・内視鏡クリニック 048-871-6521 ホームページ