- 10月 20, 2026
「大腸がん」の早期発見と二次予防のために ― 大腸カメラを受ける意義

大腸がんは、早期に発見し、適切な治療を受ければ、決して恐れる必要がない「がん種」です。
しかし、初期(早期)には自覚症状が乏しく、日常生活に支障がないまま進行することがほとんどです。「痛みがない」「便通に問題がない」「血便がない」ということだけでは、大腸がんがないとは判断できません。
私は、大腸がんをはじめとする消化器疾患の最前線の内視鏡診断・治療に携わり、日本消化器内視鏡学会の社団評議員・指導医・専門医として、また2026年9月に認定されたFJGES(Fellow of JGES)として、「大腸がん」の二次予防の責任を果たし日々の内視鏡診療に生かすべく、コラムを執筆した次第です。
専門的な知識と経験を日々の診療に生かすとともに、患者様が検査の意義を正しく理解し、必要な時期に受診できるようお伝えすることも、私の大切な役割だと考えています。
目立った症状が出るまで待たずに、何かのキッカケがあれば速やかに大腸カメラを受けることが、早期発見につながると同時に未来の自分を救うことにつながります。
大腸がんでは、血便、便通の変化、腹痛などが受診のきっかけになることがあります。ただし、こうした症状がない段階でも、がんが存在することはしばしばあります。
反対に、血便があるからといって、必ず大腸がんというわけでもありません。重要なのは、「痔だろう」「いつもの便秘だろう」と自己判断せず、原因を確認することです。血便や排便の変化がみられる場合は、次の検診を待たずに医療機関を受診してください。
以下に受診いただくことを推奨する方を列挙しました。
・便潜血検査陽性
・複数回の血便
・以前は普通便であったが、便秘・下痢・軟便・粘液の様なものが排出される(粘液便)・便が細くなった(便柱狭小)
・血縁の方に大腸がんの方がいる
・大腸ポリープを切除してから5年以上経過している
・35歳以上の方(大腸カメラをうけたことがない場合)
・肥満の方
・赤肉(牛肉・豚肉)の摂取量が300g/週を越えている
・飲酒量がアルコール換算で23g/週を越える場合
・超加工食品を習慣的に摂取している場合:具体的には添加物が5種類以上から構成されている食べ物
スナック菓子・お菓子:ポテトチップス、クッキー、ビスケット、グミ、ゼリー、アイスクリーム、ドーナツ
インスタント・冷凍食品:カップ麺、インスタントラーメン、冷凍ピザ、冷凍パスタ、レトルト食品
パン類:大量生産された菓子パン、惣菜パン
加工肉:ソーセージ、ベーコン、ハム、ナゲット、ハンバーガーに挟まれたパティ
飲料:清涼飲料水、炭酸飲料、スポーツドリンク、加糖されたフレーバーミルクや果汁飲料、人工甘味料入り飲料
その他:市販のドレッシング、マヨネーズ、ケチャップ、フレーバーシリアル、スプレッド類
注意点
便潜血検査が1回でも陽性になった場合は、精密検査として大腸カメラ(大腸内視鏡検査)を受けることが重要です。
「2日分のうち1日だけ陽性だった」「症状がない」「痔がある」という理由で、精密検査を見送ることは勧められません。便潜血検査陽性を無視して、経過観察したために「大腸がん」が進行した状態で発見されたケースは、数え切れません。
便潜血検査の精度については、以前から述べてきましたが、手術が必要な「進行大腸がん」に対する感度は約80%であり、20%は陰性になってしまいます。多くが内視鏡治療の対象となる「早期大腸がん」の感度は50%に留まります。
便潜血検査陰性=大腸がんではない と言えないところに、便潜血検査の精度の限界があることを知っておいていただきたいのです。
大腸がんやポリープは、毎日出血するとは限らないためです。便潜血検査を再び受けて陰性になっても、精密検査の代わりにはなりません。
便潜血検査陽性は、大腸がんの確定診断ではありません。だからこそ、必要な精密検査を受け、出血の原因を確かめることが大切です。
大腸カメラは、早期発見と2次予防の両方に関わる検査です
大腸カメラでは、大腸の粘膜を直接観察し、がんやがんの前駆病変であるポリープ、炎症などを調べます。大腸カメラによる2次予防とは、大腸がんの前の状態である、いわゆる良性の大腸ポリープを発見し、その場で内視鏡的に切除することにより直接的に大腸がんを予防することです。
大腸がん発症のメカニズムには「腺腫(せんしゅ)」からがん化する(Adenoma-Carcinoma Sequence)、「鋸歯状病変(きょしじょうびょうへん)」からがん化する(Serrated Pathway)、正常粘膜からがんが発生する陥凹型(かんおうがた)などの「デノボ発がん」の発症ルートがあります。
症状が乏しいうちに検査を受ければ、上記の「腺腫」「鋸歯状病変」を大腸がんに進行する前に切除することが可能なのです(2次予防)。
早期大腸がんを認めた場合には、内視鏡的粘膜下層剝離術(ないしきょうてきねんまくかそうはくりじゅつ:ESD)の適応病変以外は内視鏡的粘膜切除術(ないしきょうてきねんまくせつじょじゅつ:EMR)で可能な限りは日帰り内視鏡手術で対応させていただいております。治療の適応は病院勤務の際と変化はありません。
当院では、開院して2年間で60例超の早期大腸がんの治療を日帰りで行ってきました。
早期の大腸がんの中には、お腹を切る手術を行わず、内視鏡による切除で治療できるものが多くを占めます。早期大腸がんが疑われる病変を検査中に認めた場合、拡大内視鏡診断、病変の大きさ、形態などを総合的に勘案し、内視鏡治療ならば①内視鏡的粘膜切除術(ないしきょうてきねんまくせつじょじゅつ:EMR)か入院して②内視鏡的粘膜下層剝離術(ないしきょうてきねんまくかそうはくりじゅつ:ESD)が適切かを判断し、③がんが粘膜下層の深い部分まで入り込んでいる(T1b癌)である可能性が高い場合は、信頼できる消化器外科医へロボット支援下腹腔鏡手術目的で紹介いたします。②の場合も基本的には紹介先で入院治療となります。
内視鏡治療を行った結果、病理組織診断の結果でT1b癌であった場合には、追加腸切除の適応となることが多いので、消化器外科医を紹介することが、ベーシックな流れとなります。
病理組織診断の結果報告に3週間程度を要する理由について、ここで述べておきます。病理医の質に強いこだわりがあるからです。病理医にも専門分野がありますので消化管(食道・胃・大腸)が専門でない病理医の方が多いわけです。皆様の大切な診断を委ねるわけですから、ディスカッションを重ねた上で、病理医の指名を行っており、大学病院の准教授・教授クラスが主に診断を担当していただいております。患者様におかれましては、消化管が専門ではない病理医よりもはるかに信頼性が高い消化管を専門とした病理医に診断されているという恩恵を享受しているのです。そのような背景があり結果判明に3週間程度の時間を要していることをご理解いただければと思います。
症状のない方に対する一般的な大腸がん検診では、40歳から年1回の便潜血検査が案内されています。症状のない方が、大腸カメラを希望される場合には、保険適応がない場合がほとんどですので人間ドック(自費での施行)で受診いただくことを推奨しております。
受診される前に大腸カメラの保険適応については、大腸カメラのFAQをご覧ください。因みに人間ドックで大腸カメラを受診いただいた患者様においてADR(腺腫発見率)は78%であり、有症状の方(保険受診の方)よりも当院ではADR(腺腫発見率)が高いということで、意外な結果かもしれません。全ての患者様は、検査日にそのまま日帰り内視鏡切除で対応いたしました。
検査への不安も、受診の際にお聞かせください
すべての方に一律に、大腸カメラが必要というわけではありません。検査の必要性や受ける間隔は、症状、年齢、ご家族の大腸がんの病歴、過去のポリープや検査結果などを踏まえて検討します。無症状の方が2次予防目的で大腸カメラを希望される場合も、期待される利益と負担について相談したうえで判断することが大切です。
大腸カメラには、下剤を飲む準備や、検査中の痛み・お腹の張りへの不安が伴うことがあります。検査方法や鎮静薬の使用については、体調や持病、過去の検査経験などを確認しながら相談できます。検査の際の痛みに対しては、最大限の配慮をしながらなるべく苦痛の少ない方法の提案が可能です。
一方で、大腸内視鏡検査やポリープ切除には、出血や穿孔(腸に穴があくこと)などの偶発症が起こる可能性があります。
当院では、他の大半の内視鏡クリニックでは日帰り切除対応不可能な、10mm~35mmまでを内視鏡的粘膜切除術(ないしきょうてきねんまくせつじょじゅつ:EMR)で対応しております。よって、術後のコンプライアンス期間は長めに想定しており検査に臨んでいただいております。検査・内視鏡治療のベネフィットとリスクを理解し、納得して受けていただくことが大切です。
必要な大腸カメラを、先延ばしにしないために
私がお伝えしたいのは、大腸がんや大腸ポリープを早期に発見する機会を逃さず、必要な検査を適切な時期に受けていただきたいということです
先に列挙した部分に該当する方は、ご相談ください。検査への不安も含めてお話を伺い、大腸カメラが必要かどうか、どのように進めるかを一緒に検討します。
大宮駅ささじま消化器内科・内視鏡クリニックでは、専門的な知見に基づく診療と、患者様への丁寧な説明を大切にし、大腸がんの早期発見と予防に取り組んでまいります。