• 11月 20, 2024

大腸カメラ検査受けるにあたってご確認いただきたいこと(2)

 前回(1)は、検査全般にあたってのことに述べてまいりました。

 今回は、特に便潜血陽性や血便の患者様などはポリープなどの日帰りポリープ切除術の病変が発見される確率が高いことが想定されます。

 そこで、検査をうけるにあたってどのような切除方法があるのか、施設によって切除に対するスタンスは様々であることは、あまり調べないままご受診されている方が多いかもしれません。

 ホームページにも記載があるので重複する内容もあります。
 ①Cold snare polypectomy(コールドスネアポリペクトミー):高周波電源を使用せず、金属のスネアワイヤーで絞りこんで切除します。腫瘍サイズが10mm以下で、かつ形態が非有茎性(:くきを持たない病変)であり拡大観察で腺腫と術前診断された場合に適応となります。切除可能な深さについては、粘膜下層はほとんど取れないためです。この方法で切除可能な病変は限定的です。高周波を使用した内視鏡切除と比較すると後出血や穿孔などの偶発症が少ない傾向にありますが、両者には統計学的有意差はないというのが現状です。


 最近、このコールドスネアポリペクトミーを早期癌に対して行った後に、進行癌で再発した症例が報告されるなどの問題点が浮き彫りになっております。今後もこのようなケースは増えるのではないかと懸念されます。

 
 ②Polypectomy(ポリペクトミー):高周波電源は使用しながら、金属のスネアワイヤーで絞りこんで切除します。熱を加えて切除することから、熱を加える時間が長かったりすると切除後の潰瘍底(かいようてい)から後出血(こうしゅっけつ)を来す確率が、cold snare polypectomy(コールドスネアポリペクトミー)よりも高い可能性があります。


 ③EMR(内視鏡的粘膜切除術):粘膜下層に粘稠度の高い液体を注入してから、スネアワイヤーで絞り込んでから高周波電流を流して切除する方法です。腫瘍サイズが10~20mm程度の平坦な病変(横に広がっている病変)大型の有茎性病変(茎を持った病変)陥凹型(凹んだ形態)の病変早期がんなどに適応します。ここからは経験則ですが、形態が有茎性病変(くきを有する病変)にも、cold snare polypectomy(コールドスネアポリペクトミー)を無理に適応するよりもこのEMR(内視鏡的粘膜切除術)を適用したほうが、術直後の出血や後出血も少なく、病変を確実にきれいに切除可能です。

S状結腸に20mm大の有茎性ポリープを認めます。クリニックレベルだと、このような病変を切除している施設は少ないので、このような病変が偶然発見されると他の施設に紹介となってしまい再度治療のために外来受診を行ってから、一泊入院して治療となることが多いと思われます。
体位変換を行って、茎部を視認しやすくします。当院ではこのレベルの長さの茎ですと、切除前にclipをかけたり、留置スネアをかけることはしません。
茎部に粘稠度の高いグリセオールを局注します。
その後、スネアワイヤーで絞扼(はさんで締め上げること)して切除しました。切除後の潰瘍底周囲には凝固波による白濁は非常に乏しいのがお分かりいただけると思います。このようにシャープに切除すると後出血(後から出血すること)のリスクを減らすことができます。最新の高周波手術装置VIO3を病変ごとにカスタマイズして使用しております。

後出血予防のために、このようなケースではclipで縫縮いたします。clipは1週間程度で自然脱落し、便で排出されます。排便時に気付くことは殆どありません。
切除標本:正常粘膜のセーフティマージンも十分に確保してシャープに切除されているのが標本からも見て取れます。

 最近は、高周波手術装置を施設として備えていないためcold snare polypectomyしか対応できない施設も増加しているので注意が必要です。Cold snare polypectomyのみで対応できるポリープは先ほど述べたように限定的です。この適応を超越した場合は、他の施設へ紹介となることが必発であり患者様にとって再度下剤を内服しなければならないなど、肉体的にも経済的にも2重の負担となります。大腸カメラ検査を受けるならば、この3種類の切除方法を適宜使い分けるための機械装置・技量を有する施設での大腸カメラ検査を推奨します。

 当院では、上記のコールドスネアポリペクトミー、ポリペクトミー、EMR(内視鏡的粘膜切除術)の3種類の切除方法を適切に使い分けており、高周波手術装置もVIO3という最上位機種を整備しております。ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)の適応病変以外は、ほとんどのケースで検査当日そのまま日帰り内視鏡手術(切除)へと移行いたします。

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